【実務】入管における審査プロセス

  • 2018.05.17 Thursday
  • 10:00

前回のエントリーで予告したとおり、今回は入国管理局における具体的な審査プロセスについて解説いたします。

この審査プロセスは永住ビザに限らず、基本的にすべての在留資格に共通していますので、流れを理解しておくことで申請する側の心構えが備わるのではないかと思います。

 

さっそくみていきましょう。

 


 

 

【1】基調調査

申請が受付されると、申請内容や申請人の状況に応じて、審査の参考となる資料(たとえば、過去の申請資料や届出情報等)を抽出します。もし管轄が異なる場合(たとえば、前回は大阪入管管轄、今回は東京入管管轄等の場合)は、当該地方局等の長に対して資料の送付を依頼します。ただし、立証資料等により在留資格該当性及び基準適合性が明白であり、かつ、在留状況に問題がないと認められる場合は、これら資料の到着を待たずに処分を行うことができるとされています。

 


 

【2】受け付けた案件の振分け

申請受付後、所要の電算処理を行った上で、速やに『振分け担当者』が案件の振分けを行います。

具体的には、状況に応じて下記のとおり4つの分類に振り分けられます。

 

案件》許可(交付)相当の案件

案件》慎重な審査を要する案件(いわゆる慎重審査案件)

案件》明らかに不許可相当の案件

案件》資料の追完を要する案件

 

※詳しくは以前のエントリーをご参照ください。

 


 

【3】実体審査

上記【2】で案件を振り分けられた担当審査官が審査を行います。

具体的には下記プロセスで審査が進められます。

また、必要に応じて実態調査(家庭・職場訪問等)が行われます。

 

 

〇実認定

それぞれのビザには要件(法令上の条件)が規定されています。審査では、個々の事案がそれらの要件に適合するかが判断されるのですが、その前提として、当該要件に当てはまる事実の存否が問題となります。そのため、前提となる事実の把握(=事実認定)が客観的・公正に行われることが審査において何よりも重要であるとされています。

事実認定は、具体的に下記要領で進行されます。

 

(1)立証資料(書類)による事実認定

(2)実態調査による事実認定

(3)蓄積した情報による事実認定

(4)社会通念・常識による事実認定

 

(2)〜(4)からわかるように、審査(事実認定)は提出した書類だけで行われるわけではありません。提出する書類を適正に作成することはもちろん重要ですが、(3)にあるように入管が既に掴んでいる情報との整合性も問われてくるのです。私たちが過去の申請経緯や申告内容との齟齬に注意を払うのはそのためです。

また、上記のなかでも興味深いのは(4)です。(1)から(3)までの事実認定に際して、判断に迷うことがあれば、入管も最終的には“世間一般の常識”に沿って判断しているということがわかります。

いくら法令に規定がないからといって、あまりに非常識な判断をされたらとても納得できませんよね。この点は、裁判官についても経験則・論理則(平たく言えば常識)に反する認定は法令違反とされることがあるという点と通底しているように思います。

 

∨[瓩悗療てはめ

前記のようにして事実を確認した上で、最後にその事実を法律・規則等に当てはめるのが審査の仕上げです。

なお、入管の内部基準である審査要領(第1編第2節)には、「行政処分については、法令が明示する要件以外の要件は一切あり得ない」と明記されています。

入管実務を行う上で、法令の知識や正確な解釈がいかに重要であるかを再認識させられます。

 

処分

上記´△侶覯漫⇒弖錣謀合していると判断された場合は『許可(交付)』処分を、不適合と判断された場合は『不許可(不交付)』処分がなされます。

処分(行政処分)は必ず法令の明文の規定に基づき行われなければならず、特に不利益処分(不許可等)を行うにあたっては、法令の定めるいずれの要件に適合しないのかについて、正確な事実認定に基づいて判断した上で、申請人に対しても理由(どの要件に適合しないのか)を明示しなければならないとされています。

処分の結果によっては、申請人の人生を大きく左右することになるわけなので、それだけに正確さや慎重さが求められるわけです。

 


 

【4】事案概要書等の作成

所要の審査を終えたときは、当該案件を担当する入国審査官は、認定した事実及び審査上の留意点等を踏まえ、これらに基づく措置方針を記載した事案概要書(下記)を作成の上、起案するとされています。そして、最終的には決裁者がこの事案概要書の記載等を踏まえて総合的に判断し、決裁を行うことで処分が決定することとなります。

 

なお、不許可(不交付)処分の際も上記事案概要書が作成されるのですが、私たち行政書士が申請人に代わって不許可(不交付)理由を当局にてヒアリングする際、説明を担当する審査官も多くの場合この事案概要書を手にしながら説明を行っています(ただし、私たちが直接この書類を閲覧することは原則認められません)。

 


 

以上、審査プロセスの概要をご説明しました。

 

私たち行政書士は、プロとして依頼を受けて申請をお手伝いしています。

そのため「申請したらそれでおしまい、あとは審査官の判断にお任せ」では、あまりに無責任です。

実際に審査官がどのように事件を処理し、どのような方針のもと何を拠り所として審査を進めているのか、その全過程を先回りして依頼人の利益につながるように最大限アシストすることが、私たちの使命であり、存在意義であるはずです。

 

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【実務】入国審査官の“心証”とは?

  • 2018.05.10 Thursday
  • 14:00

突然ですが、外国人の在留資格について、許否を判断するのは誰でしょうか?

 

以前のエントリーでご紹介したとおり、入管法上は「法務大臣」となっています。

しかし、実際は地方入国管理局に配属された「入国審査官」が実体審査を行っています。

 

そのため、申請する側としては、入国審査官に対してビザ取得の要件充足を主張立証していくことになるのですが、入国審査官が許否(許可するか否か)を判断する場面において、“心証(しんしょう)”という言葉が使われることがあります。

 

 

「このような対応は審査官の心証が悪くなる(心証を害する)」

「こうした方が審査官の心証にいい影響がある」

などという使い方をされることが実務の現場では多いです。

 

この“心証”という言葉、日常生活ではあまり聞き慣れないかもしれません。

 

一般的に「心にうける印象」という程度の意味でも使われることはあるのですが、

じつは、(本来は)法律用語として裁判官について使われている言葉なのです。

具体的には、裁判官が訴訟において事実認定をし、判決をくだすにあたって拠り所とする内心的判断のことを意味します(自由心証主義といった使い方がされています)。

 

それが、いつの間にか専門官庁における審査官(入国審査官や特許庁の審査官など)や審判官に対しても使われるようになったわけです。

 

裁判において勝訴か敗訴か、有罪か無罪か、といった判断がくだされるのと同じように、在留資格の審査に際しても、「許可(交付)」か「不許可(不交付)」か、基本的にはふたつにひとつ、白黒ハッキリつけなければなりません

そのため、入国審査官のような特に専門性が高い行政機関の審査官についても、裁判官に類するものとして“心証”という言葉が使われるようになったのかと想像されます。

※正確には、「許可(交付)」「不許可(不交付)」の他に「終止」(申請取り下げや申請人死亡等)という処分もあります。

 

上記の入国審査官の“心証”をイメージしやすいように、“心証メーターぴのこ:)”なるものを図式化してみました。

 

※上記はあくまでイメージです。絵が下手なのはお許しください。

 

もちろんこのようなメーターが実際に存在しているわけではないのですが、審査官の内心的構造を視覚化することで、審査や申請に対する心構えが少し変わってくるかもしれません。

それでは、上記図から、どんなことが見えてくるのでしょうか。

 


 

上記のとおり、基本的に在留審査における処分は、基本的には「許可(交付)」か「不許可(不交付)」のふたつにひとつです。

 

したがって、極論としては、たとえどんなにスレスレでも、最終的に許可の方向に1ミリでもメーターが振られれば、「許可(交付)」という処分がくだされるわけです。

実際に、難案件や複雑な案件、許否が微妙な案件(いわゆる慎重審査案件)ほど、ギリギリのところで許可の方向に振り切られたのだろうと推測される事案が少なくありません。

 

たしかに付与される在留期間の長短という面でのグラデーションこそありますが、最終的に「許可(交付)」を得ることが目的なのであれば、何も許可の方向に大きく振り切って(上記図でいうところの「10点」や「9点」で)認定される必要はないのです。

「10点」で許可されようが、「1点」で許可されようが、『許可』という行政処分に変わりはないからです。

 

むしろ難しい事案こそ、あえて「1点」や「0.5点」あたりのギリギリラインを狙っていった方が効果的なこともあります。

無理に高得点での許可を狙うあまり、不要な書類を過度に添付してしまうことで要点が不明確になり、審査遅延を招くこともあるからです。

 

およそ何点での許可を狙っていくか、このあたりの実際の“さじ加減”は実務上の経験則によるところも大きいため、ここで詳しく説明することは難しいのですが、上記のようなメーターをイメージいただければ、審査官の胸の内は何となく想像できるのではないでしょうか。

 


 

彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず』(孫子)ということわざが教示するとおり、自身の状況だけでなく、相手(審査官)の考え方や審査動向を先回りしてイメージしておくことは、良い結果を勝ち取るためにとても重要です。

 

次回は、上記“心証メーターぴのこ:)”を踏まえ、入国審査官の審査プロセスについて、より詳しくご説明する予定です。

 

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【Q&A】永住ビザの審査にはどれくらい時間がかかりますか?

  • 2018.04.26 Thursday
  • 16:43

入管業務においてもっとも忙しいといわれるのは例年1月〜4月上旬頃までなのですが、今年も何とか繁忙期を乗り越えることができました。

東京入国管理局においても、少しずつ平常運転に戻りつつあるように感じます。

 

同時に、この時期は永住ビザの条件のひとつである来日10年の節目を迎えられる方が多いタイミングでもあります。

(留学生や新社会人として来日された方は、4月入学・入社のタイミングで来日されることが多いからです)

 

そのため、例年4月〜6月は永住や帰化の問い合わせが増える時期でもあります。

 

永住ビザの申請を検討されている方から決まって受ける質問として、永住ビザの審査にはどれくらいの時間がかかりますか?というものがあります。人生設計の中で永住ビザ取得を目指す方も多いので、やはり申請から結果(許可・不許可)までの時間は気になるものですね。

 

 

行政手続に関する審査に要する期間を『標準処理期間』といいます(行政手続法6条)。

 

永住ビザの審査に関する標準処理期間については、法務省HPで公表されています。

それによると、標準処理期間は「4か月」とされています。

 

たしかに、案件によっては(特に懸念事項が少ない事案の場合)4か月前後で許可されるケースは少なくありません。

また、各入国管理局の管轄によっても大きな差があります。

たとえば、四国4県を管轄する高松入国管理局では、わずか5週間で永住許可された事案もありました。

 

なお、東京入国管理局管轄下においては、おおむね「6か月」が目安となっております。

実際に東京入管永住審査部門の担当官も、約半年かかっているのが現状との見解を示しています。

 


 

これはあくまで東京入国管理局における一般的な感触なのですが、許可される見込みが高い案件については、早くて4か月、遅くとも6.5か月ほどで結果(許可)が出ている一方で、7ヶ月を過ぎると不許可の可能性が一気に高くなる傾向にあります。

 

 

それでは、なぜこのように審査期間に大きな差が生まれているのでしょうか?

もちろんそれは対象事案の状況や性質、難易度等によって審査に要する時間が異なるからなのですが、それは具体的に審査プロセスどの段階(時点)で決まるものなのでしょうか?

 

 

★じつは、意外と早く、しかも審査の最初の入り口部分において、ある程度審査の方向性が決められているのです。

 

この事実は永住ビザに限らず、すべてのビザ申請において共通する重要な観点ですので、今回はその点について少し掘り下げてご説明いたします。

 



 

イメージしやすいように、実際の申請手順に沿って見ていきましょう(以下、審査要領をもとに構成)

 

【1】まず、ビザを申請するためには、申請書の作成に加え、所定の添付書類(証明書類等)を準備する必要があります。

 

【2】申請書類の準備ができたら、管轄する入管に持参し、窓口にて申請します。申請書及び添付書類が問題なくそろっていれば、入管にて申請が「受付」されます。

 

【3】申請を受け付けたときは、所要の電算処理を行った上で、速やに『振分け担当者』が案件の振分けを行います。

 

 

★ここでいったんストップしましょう。誰か出てきましたね。

そうです。ポイントはこの『振分け担当者』という登場人物です。

振分け担当者』とは、申請案件の振分けを行うのに適切な者として首席審査官又は所長が選出・指名した審査官のことをいい、迅速かつ適切な振分けの実現を図り、効率的な審査に努めることを使命としています。

 

申請案件の本質を短時間で見極め、その後審査方針を決定するわけですから、相当な切れ者であるに違いありません。

このように、すべての申請案件は、この最初の時点で今後の方向性を決められてしまうわけです。

 

 

【4】振分け担当者は、案件に振り分けた案件を速やかに決裁に回付し、を除く案件に振り分けたときは、速やかに担当者を決定し、配分します。

 

★はい、ここでも聞き慣れないキーワードが出てきました。「A案件」とはいったん何でしょうか?

じつは、申請されたすべて案件は、振分け担当者により下記4つの分類に振り分けられるのです。

 


 

案件》許可(交付)相当の案件

案件》慎重な審査を要する案件(いわゆる慎重審査案件)

案件》明らかに不許可相当の案件

案件》資料の追完を要する案件

 


 

【5】上記のうち案件に振り分けられた案件について、振分け担当者等は、追完資料の提出後ただちに又は案件への振り分けを行い、処理の促進を図ります。

 

【6】上記【5】により又はへ振り分けられた案件については、担当する審査官が引き続き審査を行い、最終的に法務大臣又は地方入国管理局長が許否の決定を行います。

 



 

以上が審査の具体的なプロセスです。

わかりやすいように上記フローを下記に整理してみました。

 

上記のように、審査をスムーズに切り抜けるためには、入り口部分でなるべくA案件に振り分けてもらえるよう、申請書類をしっかりと準備することが何よりも重要です。

しかし、仮にB案件に振り分けられてしまったとしても、的確なフォローにより最終的に許可にもっていける可能性は十分にあります。

 

そのため、私たちはA案件への振り分けを第一に目指しつつも、B,C案件になる見込みが高い案件に関しては、如何なるフォローが効果的か、他に主張すべき積極要素はないか、専門知識や経験をもとに検討・判断した上で申請に臨んでおります。

大切なのは、上記振り分け制度を正しく理解した上で、先回りした対策のもと申請書類を戦略的に構成していく姿勢なのです。

 

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【最新】在留外国人数(確定値)と永住者の割合

  • 2018.04.19 Thursday
  • 18:01

 

法務省入国管理局は、3月27日付けのプレスリリースにて、『平成29年末現在における在留外国人数について(確定値)』を発表しました。

 

公表によると、平成29年末の在留外国人数は、256万1,848人で,前年末に比べ17万9,026人(7.5%)増加となり過去最高の数値となったとのことです。

 

そのうち、永住者74万9,191人で、在留資格別の人数ではダントツの1位(構成比29.2%)です。

昨年のエントリーでもご紹介したとおり、在日外国人のうちおよそ3人に1人が永住者という状態です。

 

永住者の人数は一昨年(2016年)末と比べて2万2,080人増加したとのことですので、残念ながら不許可となってしまった事案も含めると、昨年中だけでも3万件近くの永住許可申請(取得含む)が行われたものと推測されます。

 

 

さて、今回の統計のなかで注目してみたいのは、外国人の住所の比率です。

 

外国人がもっとも多い都道府県は「東京都」で構成比21%です。

在日外国人のうち、5人に1人が東京都に住んでいるわけですが、

2位「大阪府」(9.5%)、3位「愛知県」(8.9%)とやはり大都市が続きます。

 

4位以降は、4位「神奈川県」(8.0%)、5位「埼玉県」(6.5%)、6位「千葉県」(5.7%)と関東勢が占めているのですが、東京入国管理局が管轄する10都道府県のうち、7都道府県が上位10位にランクインしており、人数比率も既に約50%に迫っていることから、全国に8つある地方入国管理局の中でも東京入国管理局が扱う比率の多さに改めて驚かされます。

(どうりで毎日あれだけ混み合うわけだと、納得できるわけです…)

※統計の詳細はこちらで確認できます。

 

なお、昨年もっとも外国人が増えた都道府県は、意外にも「熊本県」でした(前年比 16.5%増)。

反対に、もっとも外国人が減ってしまった都道府県は「長崎県」とのことです(前年比12.9 %減)。

在住外国人の人数については、都道府県によって毎年多少の増減はあるのですが、じつは、今回の長崎県のような10%台の減少はめったにありません(少なくともここ5年間の統計ではここまでの減少はみられません。)。

…いったい長崎県に何があったのでしょうか。

 

 

真相はわかりませんが、この統計を眺めていると、日本で暮らす外国人の“今”が見えてきます

毎年3月に法務省プレスリリースにて発表されていますので、チェックしてみると意外な発見があるかもしれませんよ。

 

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【Q&A】永住ビザを許可するのは法務大臣?地方入国管理局長?

  • 2018.04.12 Thursday
  • 17:43

外国人の方(特別永住者を除く)であれば、入国管理局に提出するビザの申請書をご覧になったことがあると思います。

申請書の1枚目冒頭(左上)には、通常、あて先となる行政機関の長の名称を記載する欄があるのですが、永住ビザとその他のビザ申請では、あて先の名称が異なることをご存知でしょうか?

 

 

おそらくこの違いを意識する人は少ないでしょうし、知っていたからといって何か得するわけではないのですが、その違いの理由を辿ることで、永住ビザの特殊性を垣間見ることができるので、豆知識としてご紹介します。

 


 

それでは、最初にビザ変更の際に提出する「在留資格変更許可申請」の申請書の記載を見てみましょう。

 

 

上記で赤く囲ってあるとおり、あて名は『○○(地方)入国管理局長』となっています。

※○○には東京や大阪など、地方入国管理局の管轄名称(全国で8箇所)を記載します。

 

そして、許可された際に交付される在留カードにも、同様に地方入国管理局長名が記載されます。

 

 

なお、ビザ変更以外の、在留期間更新、在留資格取得、資格外活動許可等の各申請書も地方入国管理局長宛となっております。

 


 

次に「永住許可申請」の申請書の当該箇所を見てみましょう。

 

 

上記のとおり、永住ビザ申請の際は、地方入国管理局ではなく、『法務大臣』宛となっています。

そして、同じく許可された際に交付される在留カードにも『法務大臣』との記載があります。

 


 

このように、永住ビザとその他のビザ申請では、申請時のあて名及び許可主体(許可をする者)が『法務大臣』か『地方入国管理局長』かで異なるのです。

 

ちなみに、許可のみならず不許可主体も同様に異なります。

下記「不許可通知書」に記載のとおり、変更(上)は地方入国管理局長、永住(下)は法務大臣の名で処分がされています。

 

 

 

それでは、なぜこのような取扱いの違いが生じているのでしょうか?

以下にその理由を探っていきましょう。

 

ビザ手続きはすべて入管法令(入管法や法務省令等)で規定されていますので、まずは入管法の規定を確認する必要がありそうです。

先に見た在留資格変更に係る条文を参照してみましょう(下線太字引用者)

 


(在留資格の変更)

第二十条 在留資格を有する外国人は、その者の有する在留資格(これに伴う在留期間を含む。以下第三項まで及び次条において同じ。)の変更(高度専門職の在留資格(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第一号イからハまでに係るものに限る。)を有する者については、法務大臣が指定する本邦の公私の機関の変更を含み、特定活動の在留資格を有する者については、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動の変更を含む。)を受けることができる。

2 前項の規定により在留資格の変更を受けようとする外国人は、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し在留資格の変更を申請しなければならない。ただし、永住者の在留資格への変更を希望する場合は、第二十二条第一項の定めるところによらなければならない。

3 前項の申請があつた場合には、法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。ただし、短期滞在の在留資格をもつて在留する者の申請については、やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとする。


 

あれ、おかしいですね…。

条文では地方入国管理局長ではなく、『法務大臣』に対して申請するとされています(2項)。

また、許否の判断主体も地方入国管理局長ではなく、『法務大臣』のようです(3項)。

ちなみに、在留期間更新(21条)や資格外活動許可(19条2項)等も同様に法務大臣となっています。

 

はて、、

永住ビザ申請の条文はどうでしょうか?

 


(永住許可)

第二十二条 在留資格を変更しようとする外国人で永住者の在留資格への変更を希望するものは、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し永住許可を申請しなければならない。

2 前項の申請があつた場合には、法務大臣は、その者が次の各号に適合し、かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、これを許可することができる。ただし、その者が日本人、永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては、次の各号に適合することを要しない。

一 素行が善良であること。

二 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。

3 法務大臣は、前項の許可をする場合には、入国審査官に、当該許可に係る外国人に対し在留カードを交付させるものとする。この場合において、その許可は、当該在留カードの交付のあつた時に、その効力を生ずる。


 

こちらもやはり宛て先、許可主体ともに『法務大臣』となっていますね。

このように、法律の条文上はどちらも『法務大臣』となっているのに、どうして先述のような違いが生まれることとなったのでしょうか?

 

★その理由は、入管法上、法務大臣の権限の一部が地方入国管理局へ委任されているからです。

※「委任」(=権限の委任)とは、行政庁がその権限の一部を他の行政庁に委譲すること。権限の委任があったときは、受任機関が自己の名と責任においてこれを行使する

 

先に見たとおり、本来は(条文上は)原則としてすべてのビザ手続きについて、法務大臣が自ら、その名において審査・処分をしなければなりません。

しかし、日々膨大な数のビザ申請が行われるなかで、そのすべての事案について法務大臣が主体的に審査することは現実的ではありません。

そこで、法務大臣の各種権限の行使に係る事務処理の合理化を図るため、法務大臣の権限を地方入国管理局長に委任することができることとしたのです(69条の2)。

 

したがって、上記の在留資格変更や在留期間更新等の場面については、その権限が法務大臣が地方入国管理局に委任されているため(入管法施行規則61条の2)法務大臣ではなく地方入国管理局長があて先であり、許否の判断主体となっているわけですね。

 


 

 

それでは、なぜ永住ビザ申請はその権限が地方入国管理局長へ委任されなかったのでしょうか?

言い換えれば、なぜあて先や許否主体が『法務大臣』のままとなっているのでしょうか?

 

★ここに永住ビザの特殊性を裏付けるミソが隠されています。

 

なぜ永住ビザは法務大臣あてに直接申請し、法務大臣が直接許可・不許可処分を行うのか。

その理由は、永住許可については、「申請を行った外国人の永住が日本国の利益に合するか否かという高度な判断が求められ、こうような判断は、法務大臣の責任その名においてのみなすべきものである」と考えられているからです(実務六法)

 

永住ビザについての審査は、いわば入管として外国人の在留に関する最終の審査になることから、他のビザとは比べ物にならないほど、厳格かつ適切に行われる必要があります。

だからこそ、永住ビザについては、地方入国管理局長任せにせず、法務大臣が自ら責任をもって判断しているわけですね。

実際の審査実務上も、永住ビザ申請案件については、『全件本省進達として扱われています(審査要領)

そのため、永住ビザの申請書類は、全国どこの入管に提出しても、原則としてすべて東京の法務省(本省)に送られ、法務大臣の名において審査・処分がされることになっています。

※「進達」とは、下級の機関から上級の機関に一定の事項を通知し、又は一定の書類を送り届けること。

 

このように見てみると、永住ビザの特殊性や重要性が改めて理解できるものと思います。

 

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【最新】ビザ申請時にSNSのID提示を要求されるようになる!?

  • 2018.04.05 Thursday
  • 22:06

新年度になり、日本列島を桜前線が縦断していますね。

お花見の席では、満開の桜をバックに、InstagramやFacebookに写真をアップする人も多いと思います。

 

“インスタ映え”という言葉もすっかり定着していますが、SNSとビザについて政府のある提案が話題になっています。

 


 

ビザの申請人は、過去5年間に利用したすべてのSNSのIDを、審査機関に提出しなければならなくなるかもしれません。

このほか、過去5年間の電話番号や電子メールアドレス、海外渡航歴なども記載が求められる可能性があります。

 

 

 

――といっても、これはアメリカの話。

 

報道(ロイター)は次のように伝えています。

 


米連邦政府はビザ申請者から収集する情報の拡充に向け、ほぼすべての申請者にソーシャルメディアIDの提示を求めることを提案している。29日付の国務省の連邦公報で明らかになった。

提案が行政管理予算局(OMB)に承認されれば、移民・非移民を問わずほぼすべてのビザの申請者は過去5年間に利用したすべてのソーシャルメディアIDの記載が必要になる。このほか、過去5年間の電話番号や電子メールアドレス、海外渡航歴なども求められる。


 

テロなど凶悪な犯罪を防止するためには、渡航者から一定の情報を入手して管理する必要はあるでしょう。

しかし、利用範囲や当局の適用基準が明確でないと、国籍や思想・信条等によって差別的な取扱いがなされるおそれもあります。

 

もしこのような運用を日本の法務省入国管理局も導入したら、と考えるとどうでしょうか。

 

入管法は「出入国の公正な管理」(1条)を目的に掲げていますが、「公正」さとは何か、「管理」はどこまでが許容されるのか、など、議論されるべき点は多いはずです。

 

米国政府の上記提案が承認されるかはまだわかりませんが、

裏を返せばSNSの情報発信力・吸引力をそれだけ国家が重視しているということになります。

 

パブリックコメントの受付は5月29日までとのことなので、

今年の夏休みまでには結論が出ているものと思われます。

 

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【Q&A】永住者でも退去強制されることがありますか?

  • 2018.03.29 Thursday
  • 22:17

前回のエントリーでは犯罪歴と永住ビザについてご説明しました。

 

実際に、永住ビザ申請前の段階において、犯罪歴が与える影響について質問を受けることは多いです。

しかし、永住ビザ取得後の犯罪歴については、あまり心配される声を聞きません。

 


 

永住ビザをとれば、ずっと日本にいられる。

こういった安心感があるからでしょうか。

 

★しかし、前々回のエントリー(永住ビザ取消し)でも触れたとおり、たとえ永住者であっても法律上「外国人」である事実に変わりはありません。したがって、永住者であっても、退去強制事由に該当すれば、日本国からの退去を強制されることがあります。

 

 

永住者である以上、日本に生活の本拠があり、公私ともに日本に定着して暮らしているはずです。

仕事も家族も友人も、その多くが日本にあるはずです。

 

それなのにも関わらず、国家により、強制的に国外へ追い出されてしまうわけです。

 

◆「退去強制」とは、「国家が好ましくないと認める外国人を行政手続きによりその領域外に強制的に退去せしめること」をいいます(実務六法)

俗に「国外追放」「強制送還」ともいわれるこの処分は、生活の基盤・日々の営みそのものを根こそぎ奪い去ってしまう、それだけ重たいものなのです。

 

★さらに、永住者であっても該当しうる重大な不利益処分は、退去強制だけではありません。

上陸拒否事由に該当すれば、日本に上陸することすらできないのです。

(たとえば、一時帰国や旅行等で自らの意思で出国した場合に、再来日ができないこともありえます)

 


 

だからこそ、どのような場合に退去強制や上陸拒否に該当してしまうのか、事前にしっかりと確認・認識し、万一のリスクに備えておくことが重要なのです。

あとから、「そんなの知らなかった…」では、あまりに苛酷にすぎます。

自分自身はもちろん、残された家族や友人、職場仲間らにとっても。

 

それでは、さっそく確認していきましょう。

↓ ↓ ↓

 

 



 

まず、退去強制事由からみていきます。

 

具体的な退去強制事由は入管法(24条)に列挙されています。

号数だけでも19事由、さらに細分すると40以上もの多数の項目が挙げられています。

 

すべてが永住者をも対象に含むものではありませんが、上述のとおり対象はあくまで「外国人」であるため、主体が限定されている事由を除き、永住者も該当することになります。

 

今回は、なかでも特に永住者も該当する蓋然性が高い事由をピックアップします。

 

 

 

それは、『無期または1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者(4号リ)です。

(ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。)

 

いわゆる犯罪歴ですから、私には関係ないと思われるかもしれません。

 

★しかし、法務省公表の統計によると、毎年50〜60人の外国人が、上記4号リを主たる適条として実際に退去強制令書により送還されています。

公表されている直近の2016年年次統計によれば、4号リを適条としては51人ですが、4号チ及び同号リ(薬物犯罪や売春罪等)適条事案を含むと168人が送還されていると公表されています。

 

この中には、永住者も含まれる可能性があります(ただし、在留資格の内訳は公表されていないため、確認できているわけではありません。)

 

そのように考えられる根拠は、永住者以外、すなわち「別表第1上欄の在留資格をもって在留する者」で犯罪を犯した者であれば、上記事由とは別の4号の2を適条として処理されるケースが大半であると推測されるからです。

※4号の2は、窃盗や傷害等、刑法等に定める一定の罪を犯し、懲役又は禁錮に処せられ、執行猶予や1年以下の刑を含めて対象とするものであるため、上記4号チよりも適用範囲が広いです。実際に、4号の2を適条として、2016年には77人が送還されています。

※なお、退去強制事由でもっとも多いのは4号ロ(いわゆるオーバーステイ)で5,268人、続いて1号(不法入国者)の520人、4号イ(いわゆる専従資格外活動罪)の452人です(いずれも2016年)。

 

 



 

それでは、続いて上陸拒否事由についてみていきます。

 

◆「上陸拒否事由」(5条)とは、「我が国の利益又は公益を守る観点から、上陸を禁止すべき外国人」(実務六法)を列挙したもので、号数だけでも17事由が挙げられています。

 

 

そのなかで特に永住者が注意すべきは、下記事由です。

 

日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者。ただし、政治犯罪により刑に処せられた者は、この限りでない。」(5条1項4号)

 

上記の退去強制事由(4号リ)とよく似ていますが、大きな違いがあります。

 

★それは、「1年」の懲役等も含まれることと、執行猶予等も含むという点です。

すなわち、上陸拒否事由の方が、退去強制事由よりも適用範囲が広い(=該当する蓋然性が高い)のです。

 

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本号でいう「刑に処せられた」とは、歴史的事実として刑に処せられたことをいうため、刑の確定があれば足り、刑の執行を受けたか否か、刑の執行を終えているか否かを問わないのです。

したがって、執行猶予期間中の者、執行猶予期間を無事に経過した者等も含まれます

 

そのため、

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出来心から犯罪を犯してしまい、裁判で有罪が確定してしまったが、執行猶予をもらったからひとまず安心して母国に一時帰国したら、上記事由に該当することが発覚し、日本に戻って来れなくなってしまった…。

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そんな話も可能性がゼロなわけではないのですね。

 

上陸拒否のシーンは、いわば水際対策です。

そのため、我が国は、犯罪を犯したという事実を「反社会性の徴表」として、(永住者を含む)外国人の入国をその水際で厳しく管理しているわけです。

 

 


 

以上、永住者でも退去強制や上陸拒否の処分がされる可能性がある事由について解説しました。

 

もちろん、賢明な読者の皆さんは上記のような事態に陥ることはないと存じますが、

永住ビザを取得した後でも、日本での生活の基盤を失いかねない行政処分及び根拠法令が存在するという事実を再認識いただき、安心して日々の生活を送っていただきたいと考え、あえて“万一の事態”についてご紹介いたしました。

 

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【Q&A】犯罪歴があっても永住ビザがとれますか?

  • 2018.03.22 Thursday
  • 11:38

「じつは過去に犯罪歴があって、罰金を支払ったことがあるのですが、永住申請に影響はありますか?」

刑罰を受けた場合でも、5年以上経過すれば永住申請できると聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?」

 

 

特に車を運転される方で、交通違反経歴がある方等からこのようなご質問を受けることがあります。

また、5年あるいは10年経過していれば犯罪歴が解消?されるといった話をされる方もいるようです。

 

いくら後悔しても、過去のあやまちを消すことはできません。

しかし、日本に長く住んでいるからいつかは永住ビザがほしい。

そのような場合、何をどう気をつけたらいいのでしょうか?

また、5年あるいは10年といった話の根拠はどこにあるのでしょうか?

 


 

永住ビザの条件のひとつに、『素行善良要件』というものがあります。

入管法22条2項1号に規定されていることから、「1号要件」と呼ばれることもあります。

 

「素行が善良であること」について、法務省公表の永住許可に関するガイドラインでは、

「法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること」とされています。

→詳細はコチラ(メインページ)

 

もう少し具体的にみていきましょう。

法務省入国管理局の内部基準(審査要領)では次のように規定されています。

 


 

【素行善良要件】

次のいずれにも該当しない者であること。

 

(ア)日本国の法令に違反して、懲役禁錮又は罰金に処せられたことがある者。

(イ)少年法による保護処分(少年法第24条第1項第1号又は第3号)が継続中の者。

(ウ)日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等素行善良と認められない特段の事情がある者。

 

※ただし、刑の消滅の規定の適用を受ける者又は執行猶予の言渡しを受けた場合で当該執行猶予の言渡しを取り消されることなく当該執行猶予の期間を経過し、その後更に5年を経過したときは、これに該当しないものとして扱う。

 


 

上記のうち、まず(ア)に注目してみましょう。

いわゆる前科(犯罪歴)と呼ばれるものですね。

 

参考までにそれぞれの刑罰の内容を紹介します。

懲役は「無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする」とされています(刑法11条1項)

禁錮も刑期は上記と同じですが、「所定の作業」(刑務作業)を伴いません(刑法12条1項)

罰金は原則「1万円以上とする」とされています(刑法15条)

 

上記のうち、いずれかの刑(執行猶予を含む)に処せられたことがあると、素行善良要件を満たさないとされます。

それでは、一度刑に処せられたら、永住申請をあきらめるしかないのでしょうか?

 

 

 

大丈夫です。そういうわけではありません。

冒頭の質問にあったとおり、一定期間を経過すれば、永住許可される可能性もあります。

 

キーワードは「10年」「5年」「2年」です。

 

前掲(ア)の「ただし書き」にはこのように記載されています。

もう一度詳しく確認しましょう。

 


 

ただし、刑の消滅の規定の適用を受ける者

又は執行猶予の言渡しを受けた場合で当該執行猶予の言渡しを取り消されることなく当該執行猶予の期間を経過し、その後更に5年を経過したときは、これに該当しないものとして扱う。

 


 

刑の消滅」とはいったい何なのでしょうか?

刑法(34条の2)には次のように規定されています。

 


 

禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。

刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。

 


 

5年、10年...といった法的根拠はこの刑法の規定にあるわけですね。

 

実務上よくあるケースは,痢罰金」についてです。

罰金のような財産刑の場合、検察官の命令によって執行するとされています(刑訴法490条1項)

たとえば、交通違反で罰金処分を受けた場合なら、罰金の納付を終えてから罰金以上の刑を受けずに5年を経過すれば、刑の消滅規定の適用を受ける者に該当するため、素行善良要件を満たす(少なくとも(ア)には該当しない)ことになります。

 

 

★ただし、罰金には該当しない場合、たとえば軽微な交通違反歴(1点ケースや反則金等)であっても油断は禁物です。

そのような場合でも、繰り返し行うような状況が認められるときは、上記(ウ)に該当するとして、素行善良性が否定されることもあるからです。

 

犯罪歴”と聞けば、「私には関係ない」と断定しがちですが、上述のとおり永住要件で求められているものは必ずしも犯罪歴だけではありません。

そのため、永住申請に際しては、専門家の意見を踏まえて事前に検討されることをお勧めします。

 

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【Q&A】長期出国や離婚をすると永住ビザが取り消される?

  • 2018.03.15 Thursday
  • 18:06

「永住ビザをとった後、長い間日本を離れると、自動的に永住ビザが失効することはありますか?」

「日本人の配偶者として永住ビザをとった後、離婚したら永住ビザが取り消されますか?」

 

 

晴れて永住ビザを取得されたお客様から、このような心配の声を聞くことがあります。

せっかく努力して取得した永住ビザを失いたくないという気持ちは当然ですので、

そのような不安が生じても無理はないと思います。

 

さて、本当に上記のように長期出国や離婚等の事情が生じた場合、永住ビザが取り消されてしまうことがあるのでしょうか?

 

結論としては、上記(例示)の理由により永住ビザが取り消されることはありません。

 

「それなら安心です。それじゃあ、永住ビザを取得した以上、何があっても後から取り消されることはないですね?」

 


 

―さて、どうでしょうか?

 

★ここでご注意いただきたいのは、「永住者」の在留資格をもっている方も、あくまで外国人であることに変わりはないという点です。

※より正確にいえば、「特別永住者」を除く入管法別表第1又は第2の上欄の在留資格をもって本邦に在留する外国人です。

 

外国人である限り、『在留資格取消制度』の対象になることを忘れないようにしてください。

 

 

それでは、どのような場合に在留資格取消制度の対象になるのでしょうか?

入管法は、下記の場合に取消しの対象とすると規定しています(22条の4第1項)

太字引用者)で示した各号が、特に永住者にとって重要な事項です。

 


 

一 偽りその他不正の手段により、当該外国人が第五条第一項各号のいずれにも該当しないものとして、前章第一節又は第二節の規定による上陸許可の証印(第九条第四項の規定による記録を含む。次号において同じ。)又は許可を受けたこと。

 

二 前号に掲げるもののほか、偽りその他不正の手段により、上陸許可の証印等(前章第一節若しくは第二節の規定による上陸許可の証印若しくは許可(在留資格の決定を伴うものに限る。)又はこの節の規定による許可をいい、これらが二以上ある場合には直近のものをいうものとする。以下この項において同じ。)を受けたこと。

 

三 前二号に掲げるもののほか、不実の記載のある文書(不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示により交付を受けた第七条の二第一項の規定による証明書及び不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示により旅券に受けた査証を含む。)又は図画の提出又は提示により、上陸許可の証印等を受けたこと。

 

四 偽りその他不正の手段により、第五十条第一項又は第六十一条の二の二第二項の規定による許可を受けたこと(当該許可の後、これらの規定による許可又は上陸許可の証印等を受けた場合を除く。)。

 

五 別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を行つておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること(正当な理由がある場合を除く。)。

 

六 別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を継続して三月(高度専門職の在留資格(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第二号に係るものに限る。)をもつて在留する者にあつては、六月)以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く。)。

 

七 日本人の配偶者等の在留資格(日本人の配偶者の身分を有する者(兼ねて日本人の特別養子(民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百十七条の二の規定による特別養子をいう。以下同じ。)又は日本人の子として出生した者の身分を有する者を除く。)に係るものに限る。)をもつて在留する者又は永住者の配偶者等の在留資格(永住者等の配偶者の身分を有する者(兼ねて永住者等の子として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留している者の身分を有する者を除く。)に係るものに限る。)をもつて在留する者が、その配偶者の身分を有する者としての活動を継続して六月以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く。)。

 

八 前章第一節若しくは第二節の規定による上陸許可の証印若しくは許可、この節の規定による許可又は第五十条第一項若しくは第六十一条の二の二第二項の規定による許可を受けて、新たに中長期在留者となつた者が、当該上陸許可の証印又は許可を受けた日から九十日以内に、法務大臣に、住居地の届出をしないこと(届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く。)。

 

九 中長期在留者が、法務大臣に届け出た住居地から退去した場合において、当該退去の日から九十日以内に、法務大臣に、新住居地の届出をしないこと(届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く。)。

 

十 中長期在留者が、法務大臣に、虚偽の住居地を届け出たこと。

 


 

上記のとおり、入管法に規定された在留資格取消事由(計10項目)のうち、少なくとも半数の5項目が永住者をも対象としたものなのです。

 

永住許可申請の手続き場面で特に留意すべきは、上記のうち二号三号です。

 

一言でいえば、申請内容を偽って(いわゆる虚偽申請をして)永住ビザを取得したような場合、後からその事実が発覚した場合、永住者であっても在留資格が取り消されてしまう場合があるのです。

 

当然ながら虚偽申請は許されるものではありません。

しかし、中には婚姻実態がないにも関わらず、婚姻継続の旨を装って配偶者の身分で申請したり、契約機関における稼働実態がないにも関わらず、会社に在籍して適正に仕事をしている旨を申告し、不正に許可を得る事例もあるようです。

そのような不正な事実が発覚したときは、法務大臣は「当該外国人が現に有する在留資格を取り消すことができる」とされています(22条の4第1項柱書)

くどいようですが、たとえ対象者が永住者であってもです。

(取消の対象者は別表第1又は第2の上欄の在留資格とされており、例外は難民認定を受けている者だけだからです(同かっこ書))

 


 

とても重要な規定ですので、もう少し詳しく見ていきましょう。

 

二号にある「偽りその他不正の手段」とは、「偽変造文書若しくは虚偽文書の提出若しくは提示又は虚偽の申立てなど、申請人である外国人が故意をもって行う不正の行為一切をいい、これには、一定の行為を行わないことを含む」とされています(入管法実務六法)

前段は大丈夫ですね。申請人が故意に(=わざと)ニセモノの文書やウソの事実を伝えること等です。

決して許されるものではありません。

 

★実務上もっとも注意すべきは後段部分「一定の行為を行わないこと」も含まれるという点です。

これを専門用語で「不作為(ふさくい)」と言います。

 

申請に際して不利益な事実がある場合、たとえば、本当は長期間別居状態にある場合や、その他重大な法令違反等があるにも関わらず、それを隠して申請する場合です。

 

この点については、近年の裁判例でも「「偽りその他不正の手段」とは、当該外国人が故意をもって行う虚偽の申立て、不利益事実の秘匿、虚偽文書の提出等の不正行為の一切をいうと解するのが相当」である旨が判示されています(平成25年12月3日東京地裁判決)

 

 

上述した不作為の姿勢、いわば“不利な書類は出さずに申請する”という姿勢は、実際の申請場面では珍しくないようですが、上記取消のリスクや裁判例をみても、本来あるべき姿ではないことは明らかでしょう。

(もちろん、対象となる事実の程度にもよりますが)不利益な事実があるときこそ、それを率直に開示・申告したうえで、合理的な弁明・真摯な反省でフォローに努めるという姿勢が、じつはもっともリスク回避の近道といえるのです。

 


 

 

それでは、申請者の故意によらず、たとえば、勤務先の会社が勝手に虚偽の文書を作成し、それを添付していた場合はどうでしょうか?

その場合は、上述した「偽りその他不正の手段」には該当しません。

 

★ただし、その場合でも三号に該当する可能性がありますので注意が必要です。

本号は一号・二号と異なり、申請者に故意があることを構成要件とはしていませんので、仮に申請者自身にその認識がなかったとしても、結果的に不実の記載のある文書等を提示して許可を受けた場合は取消しの対象となりえます。

 


 

上記のほか、たとえば九号や十号は住居地の届出義務違反についての規定ですので、ついウッカリ手続き漏れがあれば、永住者でも該当してしまう可能性が十分にあるといえます。

なお、この在留資格取消制度は、たびたび法改正により該当事由が追加されています。

 

永住ビザを取得したからといって油断せず、入管法令をはじめとした法規範・ルールをしっかり理解し、日本社会の一員としての自覚ある生活を心がけていきましょう。

 

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【最新】不法就労助長罪で人気ラーメン店を書類送検

  • 2018.03.08 Thursday
  • 19:21

永住ビザの条件のひとつに、素行善良要件というものがありますが、

その条件にも関わってくる事案として、最新の報道をご紹介します。

 

 

報道(共同通信)によると、全国で豚骨ラーメン店を展開する「一蘭」が、大阪・ミナミの店舗で外国人留学生らを違法に働かせたとして、入管法(出入国及び難民認定法)違反で書類送検されました。

 

今回問題となったのは「不法就労助長罪」です。

入管法は、下記のいずれかに該当する者を、不法就労助長(すなわち、不法な就労を手助けした)として罰しています(入管法73条の2第1項)


一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者

二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者

三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者


 

「留学」や「家族滞在」等、就労活動が認められていない在留資格を有する者は、資格外活動許可(入管法19条2項)を取得した場合は例外的に働くことができるものの、労働時間は原則として28時間以内に制限されています(入管法施行規則19条5項)

 

それにも関わらず、同社では「最長で週39時間以上働き、月21万円を得た留学生もいた」といいます。

(引用元:朝日新聞デジタル

 

また、入管法には両罰規定(入管法76条の2)があるため、今回は運営会社についても法人として書類送検されたようです。

両罰規定とは:社長や役員等の個人だけではなく会社(法人)も罰する規定のこと

 

同社は首都圏でも有名なチェーン店であったことから、今回話題の中心となったのは同社の不法就労助長罪だったのですが、もちろん、不法就労を行った留学生等当人自身も資格外活動罪(入管法73条)で処罰の対象となります。

実際に本件でも、従業員のベトナム人女性(29歳)が同罪で逮捕されています。

(出典:朝日新聞デジタル

 

なお、同罪は、「一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。」とされていることから、もし逮捕されて刑が確定すれば、上述した素行善良要件に係る「(1)日本国の法令に違反して、懲役、禁固又は罰金(道路交通法違反による罰金を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(審査要領)に該当するため、この要件に適合しないとして不許可処分がなされることになります。

 

永住申請において特に注意すべきは、配偶者が「家族滞在」等就労不可の在留資格を有する場合です。

本体となる就労資格を有する外国人の扶養を受ける配偶者は、通常、就労が認められていない「家族滞在」や「留学」の在留資格を有しているため、もし審査においてアルバイト超過等の疑義が生じた場合、たとえ同罪で逮捕・起訴されていないとしても、当該事実が審査上消極的な評価につながることは間違いありません(多くの場合、扶養者の課税証明書の配偶者控除欄もしくは被扶養者の(非)課税証明書等で確認されます。また、家族同時申請の場合、たとえ違反事実が当該配偶者にのみ係るものであったとしても、それを理由のひとつとして家族全員が不許可処分を受けることもありえます)

 

そのため、本体となる申請人(主たる生計維持者)の収入だけではなく、被扶養者の収入状況も入念に確認することが大切なのです。

 

雇う方も、雇われる方も、「知らなかった」ではすまされません。

報道によると、同社は外国人雇入れの際のハローワークへの届出義務(雇用対策法28条)も履行していなかったといいます。

 

今回の報道をきっかけに、上述したルールが今一度周知されることを願ってやみません。

 

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