【Q&A】永住ビザの可否は入管が自由に判断できるの?

  • 2018.01.18 Thursday
  • 20:44

昨年弊社で取次申請を行った永住審査の結果を聞くために、

先日、東京入管2階の永住審査部門でお客様ご本人と待ち合わせる機会がありました。

 

その際、お客様からこんなご質問(疑問)をいただきました。

 

 

「永住ビザの結果は審査官の気分で決まるってウワサで聞いたんですか、

それは本当でしょうか??」

 

“気分”というのはさすがに誇張表現かと思いますが、

お客様は冗談めいた様子でもなく、真剣に尋ねられていました。

 

実際に、こういった質問はよくいただきますし、

法令上も実務上も、決して荒唐無稽なものではないのです。

 

永住ビザの条件については、以前のエントリーでも詳しく解説しましたが、

ここでもう一度、根拠条文(入管法22条2項)の書きぶりを振り返ってみましょう。

 


 

前項の申請(永住許可申請※引用者注)があった場合には、

 法務大臣は、その者が次の各号に適合し、

 かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、

 これを許可することができる

 ただし、その者が日本人、永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては、

 次の各号に適合することを要しない。

 1 素行が善良であること。

 2 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。

 


 

わざわざ赤字でアピールしているので、

言いたいことは何となくお分かりいただけるかと思います。笑

 

そうです。

法務大臣は上記条件がそろっている場合は永住ビザを許可することができるのです。

許可しなければならないわけではないのですね。

こういったタイプの行政行為を裁量行為といい、それができる権利のことを裁量権といいます。

 

 

裁量権とは、行政機関が行政行為をするに際して認められる政策的判断の余地のこといいます。

一言でいえば、申請への可否判断に関する“ふり幅”のようなものです。

※上記赤字部分のように、許可するか否かに関する裁量のことを『効果裁量』といいます。

(ちなみに、裁量行為の逆は、羈束(きそく)行為といいます)

 

さて、裁量権があるからといって、冒頭の質問のように自由に(気分で?)可否を決めることなどできるのでしょうか?

この裁量権という(まるで魔法のような力!)に対して、私たちはどう向き合っていけばいいのでしょうか?

 

永住許可に係る裁量について、われわれ行政書士等実務家必携といわれる入管法解説書(逐条解説や実務六法)では、法務大臣は、その広範な自由裁量権に基づき、外国人をとりまくあらゆる要素を総合的に考慮のうえ、その可否を判断できるとされています。

上記のような基本的な解説書は、実務家であれば誰でも参照しているため、行政書士事務所等のサイトでもその解釈を拠り所として、自由裁量を前提に説明されているものが多いようです。

 

広範な自由裁量権…、なんだかますます魔法がかってきましたね。

このままでは本当に自由に(気分で?)判断されてしまいそうです…。

 

 

★しかし!私たちはここで怖気づいてはなりません。

自信をもって永住許可申請を行うためには、

この、(一見強大な力に思える)裁量権なるものに対し、冷静に分析し、隙あらば切り込んでいく姿勢が必要なのです。

 

 

やや結論を急ぎますが、冒頭の質問に対しては、以下のように答えることにいたします。

 

(たしかに法務大臣には一定の裁量権が認められていますが、)

その判断の“ふり幅”は、じつはそれほど広いわけではないため

当然ながら気分で判断されるものではありませんし、基本条件をクリアしているか慎重に確認し、

一つひとつ丁寧に立証していけば、ちゃんと許可されるようになっています。」

 

 

それでは、なぜ上記にように言えるのでしょうか?

 

この点を考えるに際して、もう一度上述した永住ビザの条件について、

着眼点を少し変えてをみてみましょう。

 


 

法務大臣は、その者が次の各号に適合し、

かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、

これを許可することができる

 


 

今回注目すべきは赤字部分の、いわゆる国益適合要件というものです。

(※当該要件の詳細はこちらをご参照ください)

 

この国益適合要件は、3つある永住ビザの条件のうち、もっとも裁量権が大きいといわれています。

なにせ「日本国の利益に合する」とされているだけで、具体的な条件は決まってないですからね。

 

実際の永住審査に際しても(特に日本人・永住者の配偶者等については、)この条件でひっかかるケースが多いですし、その際の不許可理由の内容もさまざまです。

そのため、いろいろな事実を(制限なく)考慮要素として盛り込むことができる、ともいえそうです。

たとえば、税金に滞納があるから国益に適合しないとか、社会保険に入っていないからダメとか、経歴に疑義があるからダメ、といった具合に。

※このように、要件を充足しているか否かに関する裁量のことを、『要件裁量』といいます。

 

 

それでは、(やや極端な例ですが、)申請書記載の住所に誤記があるからダメとか、パスポートのコピーが不鮮明だからダメとか、字が汚くて読みにくいからダメとか、そんな理由で不許可にすることは許されるのでしょうか?

冒頭の質問のように、本当に自由に(気分で?)判断できるのであれば、それも許されてしまいそうです。

 

 

しかし、そんな恣意的な理由で、人生を左右する永住の可否を決められたらたまりませんよね。

 

この点(永住許可に係る裁量)が争点となった裁判では、上記国益適合要件について、永住許可のガイドラインを満たす以上は、原則として当該要件を満たすといった考え方が示されています(東京高裁平成19年7月17日判決)

 

法務省公表の当該ガイドラインでは、国益適合要件として下記の4点しか列挙されていません。

 


ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし,この期間のうち,就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。

イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。納税義務等公的義務を履行していること。

ウ 現に有している在留資格について,出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。

エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。


 

この点について、弁護士の山脇 康嗣氏は、上記の各要素については「いずれも基本的には事実認定そのものの作業で足り、(政治的判断に基づく裁量が必要となる)事実に対する要件的評価(認定事実の構成要件への当てはめ)は特段不要な性質の事項である」と解説しています。(山脇康嗣『入管法判例分析』122頁(日本加除出版、平成25年))

 

↓上記解説をよりわかりやすくするため、入管における原則的な審査のプロセスについて以下に図示します。

(◆銑には上述のとおり要件裁量・効果裁量が働きますが、,砲聾饗Г箸靴萄枸未陵消呂呂△蠅泙擦鵝2宍プロセスの理解も非常に重要ですので、この点は稿を改めて詳しく解説予定です)

 

 

山脇氏が指摘するとおり、たとえば上記アについては、上陸許可からの日数カウントによって年数として事実認定できますし、ウについても現に許可されている在留期間で即座に認定できる類のものであるため、裁量(要件裁量)の余地は限定的であるといえます。

また、このロジックは、国益適合要件以外の要件(素行善良要件・独立生計要件)にも一定応用可能なものであると考えられます。

 

したがって、このようにみていくと、永住許可に関して法務大臣(入管)が有する判断の”ふれ幅”は、決して無制限に広範なものではなく、ある程度統制されている(されるべき)ものであると理解することができるわけです。

 

 

 

法務大臣の広範な自由裁量権…、実際に入管職員もこの(魔法の)言葉を拠り所として、申請人に対して不許可理由を説明する場面が少なくありません。

そのため、(入管手続きに関していわば素人である)一般の申請人(外国人)たちのなかで、冒頭のようなウワサが広まっても無理はないと思います。

 

しかし、われわれ実務家は、決して自由裁量などという(なかば幻想的な)判断基準に振り回されてはなりませんし、甘んじてはならないものと感じます。

依頼人に安心・納得してもらうために、精緻な法令解釈・論理構成によってその魔法がかった靄を取り除くことこそ、実務家の使命であり、存在意義なのではないでしょうか。

 


 

今回取り上げた「裁量」というものは、入管法令・入管行政においてもっとも難しく、かつ非常に奥が深い重要なポイントであるため、機会があればまた詳しく分析・解説したいと考えております。

 

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